一冊が四百ページの本だと、一時間で二十冊しか作れない。これは印刷機の水準からすると極端に遅い。印刷機では一時間に十万ページくらい刷らないと話にならないのだ。もうひとつある。いまのところ、経年変化の危険性が未知数なのだ。本として作っても、それがいったい、どれだけ本として耐えられるかがわからない。たとえば写真を直射日光の下に置いておいたら、画像は跡形もなく消える。それと同じようにコピーの初期のものは印字が薄くなって、いまほとんど読めなくなっている。印刷インキはいまから百年前のものでもはっきり読める。いまの印刷インキで刷っておけば、紙さえ保てば百年くらいは読めることが実証されているのだ。これがオンデマンド印刷で刷ったとして、千年後にあるかどうかはわからない。オンデマンド印刷機が発明されてから、百年どころか十年も経っていないのだ。千年後を予測するのは困難である。メーカーは、昔のコピーとは品質が違うとは言うのだが、こればっかりはわからない。百年ならまだしも、千年保つという発想はない。いまオンデマンド印刷機を発売しているのはコピー機のメーカーだが、彼らに百年後や二百年後に残るものを作ろうという発想はない。コピーはいままで、必要なときにコピーして、そのときに役に立てばそれでいいのであって、百年後に残るものを作るという発想はなかったのだ。逆に私がメーカーの営業に「これは千年後にも読めますか」と訊いたら非常に驚かれた。「そんなことは考えたこともなかった」と言うのだ。
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