科学思想との触れ合いが、その創造力を広げている。「目に見える光を指す『Light(ライト)』という言葉があるのに対し、目に見えない光を指す言葉はありません。そこで私は、心で感じる目に見えない光を『Faou(ファウ)』と呼ぶことにしました。音のイメージをスペルアウトした造語です」アーティストのM氏が作品のテーマとするのは、この「目に見えない光」だ。赤外線や紫外線といった可視光線以外の光のことではなく、「存在するすべての生命体に宿るエネルギー」を意味する。「私たち人間自身がエネルギー体で、さらに目に見えないエネルギーを意識することによって、すべての生命体や宇宙がひとつである、連鎖していることが感じられると思うのです。だから、多くの方たちに作品を見て、そこでは実際に光を見ていることになるのですが、作品の奥にある目に見えない光を感じ取っていただけたらと願っています」創作活動は、森羅万象のエネルギーからインスピレーションを受けるところから始まる。そして、さまざまな目に見えない光を具象化するために、時代ごとの先端技術を用いる。活動当初はCGを用いて映像作品をつくっていた。「映像は投影するのにプロジェクターなどを使いますから、受け手との間にどうしてもワンクッション入りますよね。もっと直接、光を感じてもらえる方法はないかと考えていたとき、米国で開かれた照明の展示会を訪れ、カラーキネティクス社のLED製品と出会いました。これならば、光そのものを自在にコントロールできる。絵の具のように光を扱える。私が望んでいた表現方法だと飛び付きました。そして2004年に初めて使った作品が『Transcircle(トランスサークル)』です。人工的な器具を使いながらも、そう感じさせないように出力の加減などを工夫し、微妙な光の質感を表現しました」